TIÁM

真実も事実も世界によって変わる

SUMMER BAZAAR ~夏の終わり~

SUNPLUS第1回舞台公演「SUMMER BAZAAR」

 

舞台は、海沿いの全寮制男子校。
夏休み。生徒たちが続々と実家に帰省する中、寮に居残った生徒が数名。
暇を持て余していると思われた彼らは寮の伝統行事「サマー・バザー」に駆り出されることになる。
やがてそれぞれが抱える帰省しない理由も見えてきて・・・
――――いらないものは何ですか?

 

以上のあらすじとほんの少しのキャラクター紹介、出演者のインタビューから得られる情報だけを頼りに迎えた初日。

舞台は葉光学園2年生寮、サブタイトルにある夏の終わり がお盆の事を指すのを初日観劇時まで気付けず。またこの お盆 という時期がこの話の鍵になるので気付けずに先入観を持たず初日を迎えられたのは深読みする癖がある私にとっては良かったのかもしれない。

 

お盆なのに実家に帰省しなかった寮生4人、寮生じゃないのにわざわざ泊まりに来る1人。

それぞれが実家に帰りたくない、帰れない理由を持っていて 簡単に話してしまえばその 今まで誰にも言えなかった秘密 を共有することによって まともに会話したこともなかった5人が絆を深めていくお話。

 

嫌な事思い出させてごめん

やっと誰かに言えたって感じ

 

劇中でこんなニュアンスのセリフがあって、私はこのシーンがすごくすきだった。

ハズいやつ、と称されてしまうようなむず痒さが伴うシーンだけれどすごく救いのある暖かいシーンだなと思った。

 

  • 母親の自殺による家族との不和
  • 世間体の良い兄からのDV
  • 母親の浮気が原因で血の繋がらない家族
  • 妹の束縛、それから来る噂の独り歩き
  • 実らない初恋 

 

思春期の男の子たちの話だからかどれも女性がキーになる悩みが多いなと途中から気にして観ていて(小山内家に関しては母親の話をした時に昔ながらの女性、と表現した辺りからひょっとすると母親は兄弟の問題に気付いていて口出しできなかった可能性があるのかなというただの深読み。)

結局最後まで堀くんがなぜ帰らなかったのかは分からなかったけどそこは尺の問題かなと、、、、

 

 

 

自分より不幸な人を見て自分を慰めたい 

 

劇中で頂きもののメロンをかけて行われる不幸自慢大会。ここからみんなの仲がぐっと詰まっていくんだけどこのシーンの節々に宮野くんの地頭の良さや優しさが出ていて、

自分の話を聞いて欲しい、誰かに言いたいけど空気を暗くしたい訳じゃない。

恐らくそれが当初のきっかけだろうけどこの提案のおかげでみんなの中にあるしこりが少しずつ取れて解けていくのが感じられる大好きな場面。

ナイス不幸!  ってなんかいいな。

 

ここで正人くんがお兄さんの話をするの、何となく勘づいている風太くんやそうじゃないみんなに気付いて欲しかったり助けて欲しかった気持ちの現れなんじゃないかと思う。

 

この件がなければエンディングでしつこく説得しに行こうとする風太くんの事を理解できなかったかもしれない。正人くんの投げかけたSOSに気付いてくれる人がいて良かった。

暴力を振るわれている と認めることは、自分が相手にとって必要とされてる訳じゃなくストレスの捌け口にされている、この関わりが間違っている という事実も認めなくちゃならない。

 

だから直接的に聞かれたみんなの前では強く否定したし、認められなかったんだろうけど殴られたり蹴られたり不幸じゃないわけないもんな、それが存在意義みたいになってしまうのは悲しい。

 

真実を知る日が来ないままにならなくて良かった。

 

 

毎日午後2時になるアラームと死んでしまった妹との妄想の電話

 

当初は脇坂くんの妹が滑落事故で亡くなったという誤認識に運悪く束縛の激しさから頻繁に寄越してくる連絡が絡まって生まれてしまった噂。ないし秋吉母からの電話が混合されている説も無きにしも非ず

 

この話が噂だと分かった話の流れで風太くんが 真実ってそんなに簡単じゃない というニュアンスの事を口にするのがずっと引っかかっていてそこについても少し。

 

劇中でかかってくる無言電話。宮野くんが引き寄せちゃうんだよね、と言っていたけどそれは次第に女性の泣いている声の混じるものに変わっていく。

そのあとの公太くんに母親がおりてきてしまうシーンで泣きながら風太くんに謝る描写から今までの電話は秋吉母からのもので、エンディングで成仏出来た。

というニュアンスだと思ってて。

 

それは幼い兄弟の目の前で踏切に飛び込んで母親が死んでしまった という話に付随するものだったんだけどこの話、どこまでがありのままの真実なんだろう。ふと考えるとこのお話が一気に分からなくなる。

果たして上記の内容から兄弟仲がゲロくそ悪くなるのか。

恐らく医者になるという2人の夢を一方的に兄が諦めたからだとは思うけど、ここに至るまでに前述の内容以上に兄弟仲が拗れたもっと多くの紆余曲折や原因があっただろうし それは秋吉兄弟以外にも言える事だと思っていて。

 

小山内兄弟がああなってしまった理由も然り。

 

ただこの話の中で根本的な解決とはいかなくてもそれぞれ当初の状態より救いが見えていると思う。

 

きっとあの後秋吉兄弟は以前より少しずつでも言葉を交わすことができるようになっただろうし

小山内兄弟もいい意味で肩書きや後ろ盾から逃れられていればいいなと思うし

脇坂くんに雁字搦めになっていた噂がなくなれば避けものにされることも無くなるだろうし

宮野くんはお父さんと血の繋がりがなくても本当の家族になれたと思うし

掘くんの作ったブローチはきっとよく似合ってると思う。

そうであってほしい。

 

上記以外にもこのお話はまだまだいろんな方向に膨らませることが出来る余地が沢山あるから、こうやって深読みできる面白さがあるし、SUNPLUS というユニットの旗揚げ公演として演じられたのなら第2回やその先でいつか残された空白のアンサーが観られると面白いのかなと思った。

 

来ない事があるかもしれない その日 を逃さないでいられるように。

 

 

最後の電話が午後2時にかかってきている確証が結局掴めなかったんだけどそこがハマっていたらもっとステキだったなと思う。私の中で最後の電話は午後2時に鳴っていて、そして今後二度とかかってくる事はない。